iPS細胞の創薬応用

創薬研究について

創薬研究においてcell-based assayと呼ばれる細胞機能性試験は、Native cellという新しい材料とラベルフリーという新技術の投入により目覚しい変化を遂げようとしています。
この目覚しい変化の中心にいるのがES細胞やiPS細胞といった多能性幹細胞です。従来の細胞株のように大規模な実験に使用できるほどの細胞量を容易に確保することができ、かつ、初代培養細胞のようにnativeに近い細胞のソースとしてとして利用が期待されているからなのです。

創薬研究について

iPS細胞 創薬支援技術の全体図

iPS細胞 創薬支援技術の全体図

創薬研究においてcell-based assayと呼ばれる細胞機能性試験は、簡便・迅速なアッセイ方法として頻用され、すでに製薬業界のアッセイ回数の過半は細胞機能性試験となっています。
この細胞機能性試験の試験材料や検出方法・条件について、近年、めざましい変化が起こりつつあります。これまでは、いわゆる“がん化”した細胞株に創薬ターゲット遺伝子を導入し、それをモデル細胞としてハイスループットスクリーニング(HTS)や二次試験の材料として使用していましたが、現在は、初代培養細胞や、幹細胞から分化した機能細胞を探索段階の細胞機能性試験で使用することにトレンドは変わりつつあります。

さらに、細胞の変化をラベルフリーあるいは低ラベル条件で観察することで、native細胞(初代培養細胞や幹細胞から分化した機能細胞をこう呼ぶこともあります)の性質をできるだけ損なわないように工夫した試験も開発されてきています。
もちろん、創薬試験系では細胞に代表される生物材料だけで試験系は完成せず、その細胞を適切に観察できる検出系、そして細胞と検出系を適切に接続する“アッセイ条件”の全てが組み合わさって初めて実用的なものになります。
また、創薬において、最終的なクスリはヒトに対して投与されるものですが、研究段階ではヒト試料(ヒトの初代培養細胞)の入手が創薬企業の求める規模では困難であり、長期間にわたり実施される各試験間においてバラツキの少ない材料をそろえることには限界がありました。

このような課題を克服する創薬ツールとして、ヒト胚性幹(ES)細胞やヒト人工多能性幹(iPS)細胞が注目を集めています。
よく知られているように、これらES/iPS細胞は、理論的に生体を構成するあらゆる細胞に分化するという「多分化能」を備えているため、創薬研究に必要な様々な細胞種が得られると期待されています。
さらに、ES/iPS細胞はin-vitroで無限増殖できるため、大規模研究が要求する膨大な細胞量の供給も可能となります。
このような背景から、創薬研究における幹細胞の応用研究は急速に進められ、すでに実用化も始まっています。